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UTTACセミナー 2019年1月15日(火)、16日(水) のお知らせ

応用加速器部門ユーザー各位

以下の日程で、修士論文発表のためのUTTACセミナーを開催致します。

日時:2019年1月15日(火)16:00~
1月16日(水)10:00~
場所:共同研究棟C 三階305室

発表は、1/15に4件、1/16に3件(計7件)を予定しております。
以下は、各講演の概要になります。
皆様、どうぞ、お集まり下さい。

【1月15日】
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(1)
氏名:加藤 浩樹(Hiroki Kato)
タイトル(和):RHIC-STAR固定標的実験 金+金衝突 √sNN=4.5 GeV 一次相転移面の解明に向けた指向的方位角異方性の研究
タイトル(英):Study of directed flow to clarify the structure of the first-order phase transition in √sNN = 4.5 GeV Au+Au collisions at the STAR Fixed Target experiment
概要:STAR実験におけるBeam Enargy Scan(BES)プログラムはQuark Gluon Plasma(QGP)シグナルの探索や、パートン相からハドロン相への相転移の性質を研究し、QCD相構造を明らかにする事を目的としている。特に一次相転移に対して敏感な量であるとされる観測量の一つとして指向的方位角異方性(v1)が挙げられる。流体力学モデルによると、mid-rapidityでのv_1の傾き(dv1 / dy|y_{cm}=0)は、ネットバリオンの√sNN = 4 GeV付近で最小値を示すと予測されている。また、BESの測定結果から、陽子と正味陽子のdv1 / dy|y_{cm}=0が流体力学モデルと定性的に一致していることが確認され、一次相転移を示すシグナルとして期待されている。しかし、その時のdv1 / dy|y_{cm}=0の最小値は√sNN = 14.5と20 GeVの間で観測されており、これは流体力学の予測と異なる値を示す。この一例を始め、v1を完全に説明する理論予測は未だ確立されておらず、実験的にv_1の性質を深く理解する事は相転移面を探索する上で非常に重要な要素である。そこで本研究では、固定標的実験による低エネルギー√sNN = 4.5 GeVにおける粒子種毎のv1に注目し、ラピディティ、運動量依存性の測定を行った。その結果から低い衝突エネルギー領域におけるv1の特性について多面的に考察を行う。

(2)
氏名:鈴木 刀真(Toma Suzuki)
タイトル(和):LHC-ALICE実験√s=13TeV陽子・陽子衝突における単電子測定法を用いた重クォーク生成の横運動量及び粒子多重度依存性の研究
タイトル(英):Study of transverse momentum and multiplicity dependence of heavy-flavour production via single electrons in pp collisions at √s = 13 TeV with ALICE at the LHC
概要:陽子・陽子衝突において重クォーク(charmとbeauty quark)は、その質量の重さから衝突初期のパートン散乱により生じる。これにより、重クォークの不変微分断面積は摂動論的量子色力学(pQCD)と良い近似で成り立つことが知られている。実際、ALICEでは最大横運動量12 GeV/cまでの重クォーク起源電子の不変微分断面積が測定されており、これらはpQCDによる計算で再現されている。また、QGP生成は重イオン衝突で生じると考えられていたが、近年高粒子多重度の陽子・陽子衝突事象でも重イオン衝突で見られた結果が得られており、これらの現象は未だ理論的に説明されていない。本研究では高統計の√s=13 TeV陽子・陽子衝突事象を用いて、charm起源電子とbeauty起源電子の不変微分断面積を測定し、高横運動量領域(pT<50 GeV/c)までのpQCDの検証を行なった。また、重クォーク起源電子の粒子多重度依存性を測定し、未だ不明瞭な高粒子多重度の陽子・陽子衝突事象の特性に関して考察する。

(3)
氏名:川名 大地 (Daichi Kawana)
タイトル(和):LHC-ALICE実験 √s = 5.02 TeV 陽子陽子衝突及び√sNN = 8.16 TeV 陽子-鉛衝突における重クォーク起源の電子及びジェットの測定
タイトル(英): Measurement of electrons and jets from heavy flavour in pp collisions at √s = 5.02 TeV and p-Pb collisions at √sNN = 8.16 TeV with ALICE at the LHC
概要:超相対論的重イオン衝突におけるQGP生成を強く指示する実験結果として高横運動量粒子の生成抑制と生成粒子の方位角異方性が知られているが、
近年p-Pb衝突のような小さな衝突系においても方位角異方性が観測され、QGPが生成されないと考えられてきた小さな衝突系における高温高密度物質生成の可能性が議論されている。しかしこの小さい衝突系での方位角異方性の起源は未だわかっていない。小さい衝突系においてパートンは冷たい原子核効果(QGP生成による効果と独立な効果)の影響を受けるため、その影響をより詳細に理解することの重要性が増してきている。本研究では衝突初期のハード散乱によって生成される重クォーク(charm, bottom)に着目し、pp及びp-Pb衝突において重クォーク起源の電子及びジェットの生成量の測定を行った。この測定結果から、小さな衝突系における重クォークが受ける冷たい原子核効果の影響と高温高密度物質生成の可能性について議論する。

(4)
氏名:川村 陽太 (Yota Kawamura)
タイトル(和):RHIC-STAR実験 √sNN = 200 GeV 金+金及び銅+金衝突における量子力学干渉効果の反応平面に対する方位角依存性
タイトル(英):Azimuthal angle dependence of quantum interferometry relative to the event plane in √sNN = 200 GeV Au+Au and Cu+Au collisions at RHIC-STAR
概要:相対論的重イオン衝突においてHBT測定は同種粒子間の量子力学的な干渉効果を用いることにより、運動学的フリーズアウト時の粒子源のサイズや形状を求める手法である。特に、1次イベント平面に対するHBT半径の方位角依存性はフリーズアウト時の粒子源のビーム軸からの傾きに敏感な測定である。また、HBT測定によってこの粒子源の傾きを定量的に測定することは、未だに詳細な解明がなされていない運動量空間における指向的方位角異方性に対して空間的な視点から新たな情報を提供することが可能であり、非常に重要な測定である。本セミナーではRHIC-STAR実験 √sNN=200 GeV 金+金及び銅+金衝突における1次イベント平面に対するHBT半径の方位角依存性の結果を示し、またその中心衝突度依存性、2粒子平均運動量依存性について考察を行う。

【1月16日】
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(5)
氏名:高野健太 (Takano Kenta)
タイトル(和):加速器質量分析法による宇宙線生成核種36Clの測定と宇宙線イベントの研究
タイトル(英):Study of cosmic ray events and measurements of cosmogenic radionuclide 36Cl by accelerator mass spectrometry
概要:地球に入射する宇宙線と地球の大気上層における構成元素との核反応により宇宙線生成核種が生成される。地表に堆積した宇宙線生成核種を分析することで、過去に地球に到達した宇宙線強度の変動について知ることができる。近年、宇宙線生成核種についての研究が進む中で、14C(半減期 : 5,730年)を用いた測定から急激な宇宙線量の増加(宇宙線イベント)が複数報告されている(F. Miyake et al., Nature, 2012)。このような宇宙線イベントの原因としては超新星爆発や、太陽面爆発(Solar Proton Event: SPE)の可能性が指摘されているが、その原因の詳細についてはいまだ不明な点も多い。
本研究では宇宙線イベントの中でAD 774-775と5480 BCに観測された2つの宇宙線イベントを研究の対象とした。両イベントともに、宇宙線生成核種である36Cl(半減期 : 3.01 × 105 年)について測定された例はほとんどなく、本研究では加速器質量分析(AMS)により南極氷床コア中の36Clについて測定を行うことで、これらの宇宙線イベントの詳細について明らかにすることを目指した。また南極氷床コア中の36Clを測定するには、36Cl/Cl ~ 10-13以下の高感度検出が必要であり、本研究では筑波大学におけるAMSシステムを用いた宇宙線生成核種36Clの検出手法の開発を進めた。結果として36Cl/Cl ~ 3 × 10-15の検出感度を達成した。さらに今後の筑波大学AMSシステムにおける10Beの測定に向けて、10Be-AMSの開発や測定性能の評価を行った。
南極氷床コアを用いた5480 BC周辺における36Cl濃度変動は、(0.70 – 1.2) × 104 atoms g-1 という結果であり、イベント周辺では増加傾向が見られた。しかしながら5480 BC周辺におけるアイスコア試料の時間分解能は約20年であり、この宇宙線イベントについてより詳細な議論を行うには更なる高時間分解能のサンプルを用いた測定が必要であると考えられる。また、AD 774-775周辺における36Cl濃度は(0.89 – 1.4) × 104 atoms g-1 という結果であり、AD 780周辺での増加が観測された。さらに、高エネルギー陽子による宇宙線生成核種の生成量に関するシミュレーション結果との比較から、宇宙線イベントの原因として太陽面爆発を支持する結果となった。本発表では、同一試料中の宇宙線生成核種10Beの測定(F. Miyake et al., Geophysical Research Letter, 2015)との比較も含めて結果を報告する。

(6)
氏名:上岡大起 (Kamioka Daiki)
タイトル(和):薄膜からの二次電子放出を利用したRI飛行時間検出器の低物質量化と位置敏感化
タイトル(英):Development of time-of-flight detector and position-sensitive detector using secondary electrons emitted from a thin foil
概要:鉄より重い元素の半分以上は、爆発的な天体環境中での速い中性子捕獲過程(r-process)により合成されたと考えられているが、その天体環境はいまだに解明されていない。天体環境の解明にはr-processにより合成される中性子過剰核の質量を明らかにする必要がある。近年、理化学研究所のRI Beam factoryにおける稀少RIリングの開発により、r-processに関与する原子核の直接精密質量測定が可能になった。
稀少RIリングでは、リング内に蓄積した高エネルギーな不安定核(Radio Isotope: RI)の飛行時間を精度よく測定し、質量を導出する。先行研究では電場の一様性を保つために薄膜を3枚使用していたが、本研究では二次電子生成用の薄膜1枚のみに変更し、通過RIの検出器内でのエネルギー損失をより少なくすることを可能とした。
本セミナーでは、オフラインで行ったアルファ線を用いた性能試験結果と、放射線医学総合研究所の重イオンシンクロトロン(HIMAC)から供給される84Krビーム(200 MeV/nucleon)を用いた照射実験での性能試験結果を報告する。また、この飛行時間検出器の原理を応用して開発した位置敏感型検出器のデモ機についての性能試験結果も合わせて報告する。

(7)
氏名:中川 和也(Kazuya Nakagawa)
タイトル(和):RHIC-STAR実験√sNN=200 GeV重陽子・金衝突におけるハドロン相関の粒子多重度依存性の測定
タイトル(英):Measurement of multiplicity dependent di-hadron correlations in √sNN=200 GeV d+Au collisions at STAR
概要:宇宙誕生直後にQuark Gluon Plasma(QGP)という超高温・高密度のクォークやグルーオンが自在に動き回る状態が存在していたと考えられている。このQGPは高エネルギー原子核衝突実験によって実験的に再現することが可能である。これまでの研究から、原子核衝突におけるQGPの生成が確認されている。しかし、近年の実験でQGPの生成が予測されていなかった密度の小さい衝突系においてもQGP生成のシグナルである生成粒子の楕円的集団膨張運動(flow)観測されているが、シグナルとバックグラウンドの境界が不明確である。そのため、本セミナーでは2016年にRHIC-STAR実験によって取得された重陽子+金衝突のデータを用い、小さな衝突におけるQGP生成のシグナルである生成粒子の方位角相関分布の粒子多重度に対する依存性を調べ、集団的膨張運動とジェット成分の振る舞いについて考察する。