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UTTACセミナー 2020年1月7日(火)のお知らせ

応用加速器部門ユーザー各位

修士論文発表に向けたUTTACセミナーを以下の日程で開催致します。

日時:2020年1月7日(火)
    第一部 10:00~12:00 ※4名の講演
    第二部 17:00~18:30 ※3名の講演
場所:共同研究棟C 3階305室

講演の概要は以下になります。
皆様、どうぞお集まり下さい。

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<第一部> 10:00~12:00
1.
氏名:
 高村匡広(Masahiro TAKAMURA)
題目:
 LHC-ALICE実験 √sNN = 5.02 TeV 陽子-鉛衝突におけるジェット内中性中間子生成の研究
概要:
 量子色力学(QCD)によれば、素粒子であるクォーク及びグルーオンは超高温・高密度のもとでは核子への閉じ込めが解け、クォーク・グルーオン・プラズマ(QGP)と呼ばれる状態に相転移すると考えられている。LHC-ALICE実験では、光速近くまで加速した陽子、及び鉛原子核の衝突実験により、QGPの性質を探索している。中性中間子、及び高い運動量遷移を伴うハードな散乱に由来する「ジェット」と呼ばれる現象は、衝突初期に生じるQCD物質中での物質生成機構を探索するための強力なプローブである。本研究は、ジェット中で観測される中性π中間子、及びη中間子を測定することによって、ハード散乱を特徴づけるParton Distribution Functions(PDFs)、及びFragmentation Functions(FFs)の測定に寄与することを目的としている。本セミナーでは、√sNN = 5.02 TeV、陽子-鉛衝突における最新の測定結果、及び先行研究によって測定された、√s = 5.02 TeV、陽子-陽子衝突における測定結果との比較を報告する。

2.
氏名:
 田所賢一(Kenichi Tadokoro)
題目:
 LHC-ALICE 実験 √sNN= 5.02 TeV 鉛-鉛衝突における重クォーク由来電子の楕円的方位角異方性の測定
概要:
 超相対論的重イオン衝突におけるQGP生成を強く示唆する実験結果の一つとして衝突による生成粒子の方位角異方性があげられる。これまでに様々な実験結果や理論モデルを用いて議論が行われてきたが、その発生機構は未だ完全な理解には至っていない。質量の重い重クォーク(チャーム・ボトムクォーク)は、衝突初期のパートン散乱によりのみ生成され、QGPの発展の全てを経験するため、その特性理解に非常に良いプローブである。従って重いクォーク由来の粒子の方位角異方性を測定することにより、異方性の発生機構が理解され、それを通してQGP性質のさらなる理解が期待される。本研究ではALICE実験で取得された最新の鉛-鉛衝突5.02TeVのデータを用い、中心衝突度0-10 %及び30-50 %の衝突における1.0?12.0 GeV/cの重クォーク起源電子の方位角異方性の測定に成功した。本セミナーではこれらの結果を報告し、重クォーク起源電子の方位角異方性の中心衝突度依存性、荷電π中間子の方位角異方性との比較による質量依存性、さらに理論モデルとの比較を行うことにより多面的に方位角異方性の特性について議論を行う。

3.
氏名:
 中川果南(Kana Nakagawa)
題目:
 RHIC-STAR実験 √sNN=27GeV金+金衝突におけるnet-proton分布の再構築を用いた揺らぎの測定
概要:
 QCD相図において、一次相転移とクロスオーバーの境界に位置するQCD臨界点の位置は未だ不確定である。臨界点探索において有効な手段の一つにnet-protonの揺らぎの解析があげられる。臨界点では感受率や相関長が発散することが理論上示されており、感受率や相関長に敏感であり揺らぎを特徴付ける量であるキュムラントの計測が行われている。STARのBESI実験の結果から、低ビームエネルギー領域においてnet-protonのキュムラント比に非単調な振る舞いが観測されており、その値が定性的にモデル計算と一致することから臨界点からのシグナルであると予測されている。しかし、依然として大きな統計誤差があり、より明確な物理結果を得るためにBESII実験では低ビームエネルギー領域に焦点を当てて高統計なデータの測定が行われている。また、イベントごとに生じる温度揺らぎなど他の物理量との相関を考慮して粒子多重度分布を再構築し検出効率補正を可能とする、拡張性の高い新しい補正手法が近年着目されている。本研究では、2018年に取得された高統計の√sNN= 27 GeV 金+金衝突におけるnet-proton分布のキュムラントの中心衝突度依存性の結果を示し、また、粒子多重度分布の再構築を用いた新しい検出効率補正手法を導入し既存の補正手法と比較するとともに、新補正方法の有用性について議論する。

4.
氏名:
 畠山みな(Mina Hatakeyama)
題目:
 RHIC-STAR実験 金+金衝突 √sNN=7.7 GeV 衝突型および固定標的実験における方位角異方性の研究
概要:
 Quark Gluon Plasma(QGP)とハドロンの相構造を記述したQCD相図を理解するためにパートン相からハドロン相への相転移面について研究することを目的としている。RHIC-STAR実験ではBeam Energy Scan(BES)と呼ばれるプログラムでその相転移の様子がクロスオーバーから一次相転移に移り変わる所に臨界点があるかを調べている。この相構造の探索に対して有効な手段の一つが、方位角異方性の測定である。特に一次相転移に対して敏感な量と示唆されている観測量の一つの指向的方位角異方性(v1)である。
 RHIC加速器では柔軟な衝突方式とSTAR実験に導入された前方方向の検出器を駆使することによって衝突型と固定標的型の両方を実験することができる。本研究では、2018年に取得された唯一のエネルギー領域√sNN = 7.7 GeVにおける金+金衝突のデータを衝突型と固定標的実験の両方で測定したv1とv2に注目し、ラピディティ・運動量・粒子多重度依存性の測定を行い流体的な振る舞いについて考察する。

<第二部> 17:00~18:30
5.
氏名:
 星有輝子(Yukiko Hoshi)
題目:
 RHIC-STAR実験√sNN 27GeV金+金衝突における二粒子相関法を用いた方位角異方性の測定
概要:
 宇宙が誕生した直後にはクォークやグルーオンが自由に動き回る状態(QGP)が存在していたと考えられている。RHIC-STAR実験はQGP相からハドロン相への相転移の性質を研究し、QCD相構造を明らかにする事を目的としている。超相対論的重イオン衝突においてQGPの生成を示唆する量として方位角異方性が挙げられる。方位角異方性は粒子の集団運動(flow)を反映している量とされており、中でも、指向的方位角異方性は一次相転移に対して敏感な量であるとされている。本セミナーでは2018年に新たにRHIC-STARで取得された√sNN=27GeV金+金衝突のデータを用い、方位角相関分布から求めた指向的方位角異方性および楕円的方位角異方性の横運動量依存性や粒子多重度に対する依存性、粒子間の距離に対する依存性を調べ、流体力学的振る舞いについて考察する。

6.
氏名:
 景澤怜央(Reo Kagesawa)
題目:
 固体水素標的を用いた陽子過剰核17Fの反応断面積測定
概要:
 反応断面積は原子核の大きさに感度があり、そのエネルギー依存性は核子密度分布の導出に対して有効とされている。特に、核子-核子全断面積の性質から、陽子標的を用いることで原子核内の陽子と中性子の密度分布を別々に導出できる可能性がある。これは、不安定核の特徴の一つであるスキン構造(原子核表面の陽子もしくは中性子のみの層)の研究に繋がる。しかし、不安定核と陽子との反応断面積はあまり測られておらず、そのエネルギー依存性は十分に理解されていない。本研究では、固体水素標的を用いて陽子過剰核17Fの反応断面積のエネルギー依存性を測定した。本セミナーでは、実験の概要や測定結果について報告する。

7.
氏名:
 落合悠太(Yuta Ochiai)
題目:
 宇宙線強度変動が降水中の宇宙線生成核種Be-10およびCl-36へ与える影響の評価
概要:
 本研究では宇宙線と大気を構成する元素との反応で生成されるBe-10とCl-36について注目して,
茨城県つくば市において降下フラックスを測定した。
Be-10は2014-2018年,Cl-36は先行研究も含めて2004-2018年について1か月ごとの測定データを得た。
結果から,大気中での滞留時間や偏西風といった気象条件による影響を補正したところ,
Be-10やCl-36降下フラックスは太陽黒点数と逆相関することが確認された(Be-10;
相関係数r=-0.4, Cl-36; r=-0.5)。
よって,降下フラックスは地球に入射する宇宙線強度の変動を反映しているものと考えられる。
これまでBe-7のような短半減期(53日)の宇宙線生成核種が宇宙線強度変動を示す指標として用いられてきたが,
本研究により,半減期の長いBe-10(136万年)やCl-36(30.1万年)でも指標となりえることが示唆された。
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